• 東久留米交響楽団/Higashikurume Symphony Orchestra

    べートーヴェン/コリオラン序曲

    〜 ベートーヴェンらしさが溢れる大迫力の曲 〜

     「コリオラン」序曲は1807年、ベートーヴェン37歳の時の作品です。
     古代ローマの英雄を主人公にした「コリオラン」を観た感動が、作曲の動機となったと言われています。
     ベートーヴェンの生き様は、自らに降りかかった困難を克服し生き抜いた例として音楽分野に限らず、世界中の人々に広く知られ多くの人に語り継がれています。そしてそれは作品にも色濃く反映されています。
     「コリオラン」序曲を作曲した時期のベートーヴェンは、音楽家にとっての生命とも言える難聴という悪夢に悩まされます。そして、絶望感にさいなまれたベートーヴェンは、自ら命を絶とうとして、療養中のウイーン郊外のハイリゲンシュタットで弟のカールにあてて遺書を書きました。(「ハイリゲンシュタットの遺書」)。
     しかしこの後、ベートーヴェンは死の道を選択せず、「そのような死から私を引き止めたのはただ芸術」と考えてから生まれ変わったように作曲・創作活動に意欲的に取り組むようになります。いわゆる「傑作の森」の時期にあたります。同時期には交響曲第4番、第5番、第6番、ピアノ協奏曲第4番、ヴァイオリン協奏曲などの傑作が作曲されています。

     ベートーヴェンの音楽は、それまでの形式を重視した古典派音楽の様式から、自分の感情を直接音楽表現にした作品が際立った特徴で、その後のロマン派音楽への橋渡しとなりました。
     この「コリオラン」序曲も交響曲第5番《運命》のように自らの怒りの感情をそのまま音楽表現として作品にした点に際立った特徴があり、ベートーヴェンらしい音楽作品と言えます。
     後半部分での、クライマックスに至るティンパニーの連打のクレッシェンドはまるで地響きのような強烈な怒りの激しさで、聴く人を圧倒します。フルトヴェングラー指揮の演奏はこの連打の箇所は指揮者自身が独自に原曲をアレンジしたのでしょうか、聴くとその迫力を直に体感できます。

    文責:CN(Vc)

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